前の投稿「神の始」にて遠野三山の母神様は瀬織津姫命という記述をしたが、とても謎に包まれた女神だということがわかると思います。
瀬織津姫について詳しく調べてみたくなった折、遠野駅前民宿の書棚に「エミシの国の女神」という菊池展明氏の著書を見つけたので借りてきて読んでいるところです。（本のサブタイトルに「早池峰ー遠野郷の母神＝瀬織津姫の物語」とあったので、これだ！と思ったのでした。）
伊豆権現の伝承には「柘植婦人」とあるが、安部氏ゆかりの落人的な存在であったとも伝えられていました。前九年の役における阿倍貞任の弟・宗任の妻であったともありました。
『綾織村誌』
安部宗任の妻「おない」の方は「おいし」「おろく」「おはつ」の三人の娘を引き連れて即ち今の上閉伊郡の山中に隠る。其後おないは人民の難産難病を治療することを知り、大いに人命を助けその功によりて死後は、来内の伊豆権現に合祀さる。娘共は三人とも大いに人民の助かることを教え、人民を救いしによりて人民より神の如く仰がれ其後附馬牛村神別に於て別れ三所の御山に上がりて、其後は一切見えずになりたり。其おいしかみ、おろくこし、おはやつねの三名起これり。その三山は神代の昔より姫神等の鎮座せるお山なれば、里人之を合祀せしものなり。
こちらの伝承を信じるとすれば、前九年の役最後の激戦場であった「厨川の柵」から「おない」さんは三人の娘たちを連れて遠野へ逃げてきたのでしょう。遠野側では彼女たちをかくまい、彼女たちは人々の難産難病を治療しながら遠野の民として生きたということなのでしょう。「おない」さんやその娘たちの人望の高さが、そのまま遠野三山伝説と関係していることも非常に興味深いことです。
遠野物語の中に見えたような気がした瀬織津姫の謎ですが、「エミシの国の女神」を読み進めているうちに益々謎は深まるばかり、全体の輪郭さえ全く想像できなくなってきてしまいました。
瀬織津姫の性格として
①禊ぎ・祓いの神であること
②伊勢神宮内宮の別宮・荒祭宮の神、天照大神の荒魂と呼ばれる神であること
③禍津日神という「悪神」であること
というように出典されているそうです。
なぜ禍津日神が内宮荒祭宮の神や禊ぎ・祓いの神になるのか、どうしても悪神とは考えられません。何か人為的な物を感じました。ヤマト側の文献である記述において瀬織津姫は完全消去に近い形で伏せてあるところを、縄文文化の時代に書かれたとされる「ほつま」では天照大神と一対であると語り継いでいます。瀬織津姫は縄文の姫神ということなのか？天照は女神なのに瀬織津姫と一対？天照は男神だったのか？
修験の人間にとって、滝に禊ぎはつきものだが、役小角の末裔の行者たちは、自らの守護神として不動明王をいただいて各地の山々に入り込んで行った。
深山の滝行場には、不動明王がまつられ、特に熊野那智関係の修験行者たちは、この不動明王の裏に、那智の滝神＝瀬織津姫を隠しまつっていることを忘れなかった。
不動明王に隠された女神ーその滝神＝水神である瀬織津姫は、これまで、歴史的に明かされることが無かった。そんな謎深い神ではあるが、北の霊峰・早池峰山上と、その山麓の里、および早池峰山を中心とする山々の滝神として、かくも多くまつられているのである。
しかも、瀬織津姫が天照大御神の「荒魂」と性格規定されていることを思えば、それだけでも瀬織津姫という女神がただならぬ神だということが伝わってくる。
また、このことが早池峰神の神威の高さを今に伝える遠因となっている。
かつて7世紀半ばから８世紀初頭にかけ中臣氏によって、瀬織津姫が禊＝祓いの最高神（大祓いの神）と性格規定されたことは、源初の太陽神であった天照大御神と深い関係にあったこの女神を、その関係から分離し、祝詞という神道世界の呪文に封印するということを意味していた。
東北の古代史は闇に閉ざされたままと言える。この不明な東北古代史は、ヤマトとの関係において闇に追いやられてきただけであり、一人勝手に闇の歴史を歩んできたわけではない。瀬織津姫の祝詞（中臣祓）への封印は、東北がヤマト中心の歴史の闇に封印されたことと深く呼応しているのではないか。この女神の存在自体が歴史の闇から射してくる一条の光とも言えるのだ。
あまりにも謎が多く、頭の中で整理がつきません。蝦夷の国の女神 其２以降は気が向いたら投稿したいと思っています。
大迫の早池峰ダムの橋の所に瀬織津姫の像があるそうなので行って写真を撮ってきました。
