デンデラ野と言えば、土淵町山口集落にある小高い丘が知られているが、遠野物語拾遺第266話には青笹町にあったと記されている。姥捨て山的な所は各地域に存在したのであろう。
青笹村の字糠前と字善応寺との境をデンデラ野またはデンデエラ野と呼んでいる。ここの雑木林の中には十王堂があって、昔この堂が野火で焼けた時十王様の像は飛び出して近くの木の枝に避難されたが、それでも火の勢いが強かったために焼けこげている。堂の別当はすぐ近所の佐々木喜平どんの家でやっているが、村じゅうに死人がある時は、あらかじめこの家にシルマシがあるという。・・・・・・・・【遠野物語拾遺第266話より抜粋】
場所は今でははっきりとは分からなくなったが、善応寺糠前地区コミュニティ消防センターの付近と思われる。
さて「デンデラ野」(土淵町山口集落にあった所について)は六十歳を過ぎた老人たちのコミュニティの場所だったようで、ここで暮らしながら朝になると「ハカダチ」と言い畑仕事を手伝い、夕方になると「ハカアガリ」と言いデンデラ野に帰ってきたそうである。
現在はこの「ハカアガリ」の家の再現であろう建物が作られている。(「あがりの家」とのこと。)
茅で覆われた粗末な家ではあるが、小高い丘の上は集落より冬は暖かく過ごしやすかったとも言われている。
老人たちは少しでも自分の食べ物を子や孫に与え未来を守ろうと自ら進んでデンデラ野で暮らしたのだろう。
この地区のデンデラ野は、それほど悲惨なイメージは無い。
近くにはダンノハナと呼ばれる共同墓地(処刑場も兼ねていた)があり、デンデラ野で動けなくなった老人は静かに死を待ち、この共同墓地に埋葬されたのだろう。
姥捨て山の悲惨な歴史もあったのではないかということも否定はできない。
土淵町山口集落のデンデラ野
デンデラ野の近くにはダンノハナの他にも佐々木喜善の生家(見学不可)や山口の水車小屋もある。また遠野市の上水道施設でもある「水光園」があるので宿泊や食事、ソーラーで沸かした湯に入ることもできる。