界木峠

 界木峠について「遠野物語」で触れられているのは第5話だけだと思った。

 本格的な紅葉が始まる前(冬になる前)にバイクで行ってみた。その後Facebookにアップしたらある人から「界木峠の怪」についてのコメントが寄せられ、そう言えば以前その話を聞いたことを思い出した。

 その内容は下記のとおりである。

 今から数十年前のこと。

 あるトラックの運転手が界木峠で伐採した木を左写真のようなトラックで運搬してだ時、トラックの腹を地面から出ていた岩にぶつけでしまってオイルパンを割ってしまったんだど。

 そのままエンジンを掛けているとオイルが無ぐなってエンジンを壊してしまうと思って迎えが来るまで車中泊することにしたんだど。

 寝でらったずども夜も更けできた頃、トラックの下回りをカンカンと何が叩ぐ音がして目が覚めでしまったど。

 何の音だが確かめてみればいいんだども、その運転手かなりのズグナス(度胸のない怖がり者)だったがら何も確かめれねがったど。

 夜も本当に遅ぐなった頃、ズグナス運転手の勤め先の会社の人が、いづまでも帰ってこねがら、心配になって、界木峠さ行ってみだったど。そしたら、そのズグナス運転手、車の中でプルプルど震えでらったど。

どんどはれ

【第五話】

遠野郷より海岸の田ノ浜、吉利吉里などへ越ゆるには、昔より笛吹峠という山路あり。山口村より六角牛の方へ入り路のりも近かりしかど、近年この峠を越ゆる者、山中にて必ず山男山女に出逢うより、誰もみな怖ろしがりて次第に往来も稀になりしかば、ついに別の路を境木峠という方に開き、和山を馬次場として今は此方ばかりを越ゆるようになれり。二里以上の迂路なり。

界木峠は遠野盆地を囲む峠の1つで、遠野市大洞地区と釜石市橋野町の境にある峠。旧大槌街道が通り、峠名は両郡の境に木を建てて標としたことによる境木より。

『遠野物語』によれば、江戸時代、海岸に通じるには笛吹峠が近いが、山中には山男山女がでるので次第に往来が希になり、ついには別な道路の境木峠として開き、当峠をに越えるようになった、という。
現在は笛吹峠が整備されて仙人トンネルが開通したことで、界木峠は寂れていった。

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